アダム・スミス『国富論(上)』(日本経済新聞社出版局)

上下2巻に分かれているうちの上巻は、主として基本的な経済理論を取り扱う。所謂「神の見えざる手」と呼ばれる需給関係や、商品の価値についての概念、資本蓄積による社会の発展がメイン。これまでの欧州の歴史を振り返って実例を提示しつつ、経済の仕組みを解説している。基本的には社会に出ていれば凡そ実感することで、この理論を学ぶこと自体に大きな奇異は感じないように思う。例えば需要が供給を上回れば商品価格が上昇し、逆の場合は減少する。商品の交換には経年劣化を起こしにくい硬貨、特に金貨や銀貨が用いられる。大規模な資金のやりとりを円滑に進めるため、銀行は兌換紙幣を発行する。等々。

この『国富論』は文章のみでグラフ等は殆ど出てこないが、実際に内容を理解するためには具体的な数字を追い、紙と鉛筆、又は電卓を片手に考えた方が良いように思う。漠然と文章を追っていくだけでは理解したつもりになるだけで、商品の交換や貿易や利子率による資本の変化などは理解しづらいかも知れない。何かこの『国富論』をサポートする副読本を読むと更なる理解に寄与するだろう。それが何であるかは、今はまだよくわからない。経済の教科書か?とにかく、今回はこの上巻を仕事を終えた後で一気に読み進めたため、現段階では完全な理解とは言えない。このあたりは後日、改めて読み返したい。

今後、中国史を読む上で参考にしておかねばならないのは、中国が伝統的に採用してきた重農主義がもたらす社会発展の度合いである。この重農主義や重商主義については下巻の方に詳しく紹介されている。アダム・スミスの説いたモデルに沿ってむりやり中国の経済状況を説明しよう、等という愚を犯すつもりはない。ただ、未開拓の大地を開墾しながら発展してきた六朝時代を理解するには、この『国富論』で説かれるモデルもまた参考になるのではないか。その辺を少し期待しつつ、下巻を読み進めていきたい。

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