万年筆その後

 文具が好きである。電子文具もアナログな文具もみんな好きで、買いこそしないが見ていて楽しいのである。一般人レベルでのパソコンの時代の到来を告げるWindows 95が発売された頃はまだ小学生高学年で、その前後では父親が仕事でワープロを使用していたからアナログな世界は学校の中だけに存在した。小学生の頃の文房具なんて、DQのバトル鉛筆を購入して転がして遊んだり、定規をペンではじき飛ばして相手の定規を机の外に落としたり、イライラしたときは鉛筆を囓ったり折ったりするなど、せいぜいその程度の存在であった(少なくとも私の地元では)。

 文房具に対して強い興味を覚えたのは大学の研究室に入ってからで、趣味としての文具の世界を知ったからである。当時、私の所属していたグループでは万年筆を持っている人が数名居り、面白そうだなぁと眺めていたのを覚えている。ただし記憶が正しければ、大学時代に興味は持ったけれども実際に買うには至っていない。理由は単純で、万年筆は高級筆記具であり、そこにまでお金を投じる余裕なんてなかったからである。もしかしたら買ったかも知れないが、だとしても記憶に残らない程度の印象・値段である。

 そういう訳で、実際に文具関係に手を出したのは社会人になってからで、自分で稼いだお金を自分で使えるようになってからである。その辺は前の記事に細かく書いたので差し置くが、最近になって(それでも購入したのは2013年3月頃である)金ペンの万年筆も購入した。先のCoCoonと同じPILOT製のCustom 74である。ただし私の場合は左利きであるという個人特有の難点があって、普通に書くと文字を押したり巻き込んだりする為に中字のペン先なのに文字が掠れてしまう。ネットでは持ち方を工夫して万年筆本来の書き味を引き出す方法もあるのだが、この書き方はかなり修練を必要とする上、普段使っているのは万年筆だけではないので変な癖が付いても困る。結果、自然と筆圧をやや強めにしてペン先に負荷を与えて書くスタンスに落ち着いていた。

 長い前書きになったが、ここからが本題。実は世の中には左利き用の万年筆というのが存在していて、一つはSAILORのプロフィット21レフティという代物で、約2万円。基本は細字であり、それ以外のペン先だと特注品で1ヶ月近くの時間を有するという。もう一つは伊東屋で保管してたPILOTの現在絶版の左利き用万年筆で各種ペン先のサイズがあって3万円。いずれも力を入れずにスラスラ書けて感動的だった。しかしながらお値段を考えると買うには迷うし、買ったら確実にCustom 74を使わなくなるしで悩ましい時間が続いた。

 そんな悩みを抱えていた或る日、ラゾーナ川崎の丸善にてPILOTのペンドクターがペンクリニックを開催するとの情報があった。私の左利き特有の悩みも解決してくれるかも知れない、という期待があった。何しろ、売れないにしろ左利き用の万年筆が既製品で登場するのである。幾らかお金を払えば調整できるだろうと期待した。相談した結果、ペン先のインクフローの状態を少し弄っただけで書き味が劇的に向上。全く力を入れなくても掠れずに文字を書けるようになった。しかもお値段はタダ。PILOTさん、流石です。
PILOT ペンクリニック

 CoCoonでの万年筆デビュー以来、やはり私はPILOTの万年筆に縁があるみたいで、今後も引き続きPILOTさんには万年筆事業を頑張って欲しいものである。

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