趙匡華「中国古代化学」丸善出版(2017)

本書は中国の古代から清代に至る化学技術史について述べている。テーマを全部で6つに分け、簡潔に記述している。章立ての順番で記すと、製陶技術、冶金技術、製薬技術、製塩技術、醸造技術、染色技術である。内容は当時の科学技術でどのような製造がおこなわれていたかに焦点を絞っている。そのため、その技術が当時の歴史的事件や係争に関わったかはほとんど語られていない。当時の科学技術が当時の政治情勢に及ぼした影響については、他の著作をあたるか、本書の記述を元に読者が考察する必要がある。

本書の著者、監修、翻訳はすべて分析化学の専門家で構成されている。中国史に関する知識について、原著者は中国科学技術史会の常務理事を務めているが、監修や訳者は歴史的な知識を電子文献等の公開情報によって得ているとした。単位系の換算についても同様である。そのため科学技術ではない、歴史学的な用語については留保をつけて読む必要があると思われる。

また参考文献の項目がないため、記述の根拠になった資料については本文の言及をヒントに自ら探す作業が必要となる。当然、文献だけでなく実際に出土した文物の分析結果によるものもあるが、そういう意味で本書は概説書として利用することが妥当であると考える。

そのような前提に立って本書を参照すると、古代の人たちが試行錯誤によって科学技術の成果を洗練してきた歴史が見えて非常に面白い。ヨーロッパの科学も錬金術の成果を受けながら発達してきた歴史を持つが、古代中国においても方士が古代中国の科学技術発展を担っていて、個人的に相似性を感じるところである。

これら科学技術、特に製塩や製鉄など戦争の係争原因となりやすい部分は、別の機会に別の文献を参照しながら知見を深めていきたいと考える次第である。