桓寬『鹽鐵論』本議第一 (4)

文學曰:「古者,貴以徳而賤用兵。孔子曰:『遠人不服,則修文德以來之。既來之,則安之。』今廢道徳而任兵革,興師而伐之,屯戍而備之,暴兵露師,以支久長,轉輸糧食無已,使邊境之士饑寒於外,百姓勞苦於内。立鹽、鐵,始張利官以給之,非長策也。故以罷之為便也。」

大夫曰:「古之立國家者,開本末之途,通有無之用,市朝以一其求,致士民,聚萬貨,農商工師各得所欲,交易而退。易曰:『通其變,使民不倦。』故工不出,則農用乏;商不出,則寶貨絕。農用乏,則穀不殖;寶貨絕,則財用匱。故鹽、鐵、均輸,所以通委財而調緩急。罷之,不便也。」

とりあえず文学の発言をざっと書き下せば、

「古の人は、徳を以て貴く而して兵を用いるを賤しきとす。孔子曰く『遠人服さざれば、則ち文徳を修め以て之を来たらしむ。既に来たれば、則ち之を安ず。』今道徳廃れて而して兵革に任せ、師を興して而して之を伐たんとし、戌に屯して而して之に備え、兵暴し師露る。久長に支するを以てし、糧食を転輸するも已に無く、辺境の士外に饑寒し、百姓内に労苦せしむ。塩、鉄立ち、始めは官の利張りて之を給するを以てするも、長策に非ざるなり。故に之を罷して便と為すなり。」

となり、御史大夫の桑弘羊の発言は、

「古の国家を立つるは、本末の途を開き、有無の用に通じ、市朝は一に其れ求むるを以てし、士民を致し、万貨を衆め、農商工師は各欲するところを得、交易して而して退す。易に曰く『其の変に通じれば、民倦まざらしむ。』故に工出でざれば則ち農用乏しく、商出でざれば則ち穀殖えず、賽貨絶えれば則ち財用匱し。故に塩、鉄、均輸し、財を通じ委ね而して緩急を調える所以。之を罷せば、便せざるなり。」

となるだろうか(誤りの箇所はご指摘を請う)。それぞれの言い分を簡潔に言い表すと、文学は「軍備に資金を投じて遠征を繰り返せば、遠征先の兵士は寒さに凍え饑えてしまうし、内地の百姓は窮乏状態になる。塩鉄の制度は最初こそ利するだろうが、長期的に見れば得策ではない」ということ。一方の桑弘羊は「商工業を盛んにすることで国家は栄える」ということだろうか。塩鉄官や均輸制度は交易を生み、工業が農具の供給、商業が穀物の流通に寄与すると。

つまり、ここは民力休養・重農主義を唱える文学側が桑弘羊の政策は国力窮乏を招くと非難する一方、軍備増強・重商主義を掲げる桑弘羊は依然として塩鉄官、均輸制度の有効性を訴えている場面である。