野沢豊『辛亥革命』(岩波新書)

辛亥革命 (岩波新書)

辛亥革命 (岩波新書)

アヘン戦争、日清戦争以後の混迷を深める清国の状況から、如何にして辛亥革命が起こったかについて言及している。先に紹介した同じ岩波新書の『中国近現代史』が太平天国の乱から文化大革命以後までをカバーしているのに比べると、だいぶ限定的でボリュームもすっきりしている。また、本書は歴史学研究の成果に基づいて執筆され、引用元の文献が提示されていることも好印象である。

本書は5章構成であり、そのうち最終章は辛亥革命が日本に与えた影響を考察している。

日韓併合以後の間島問題による宋教仁らの対日警戒感、横浜―大連航路開通による上海―営口―奉天交易ルートの衰退など、満州方面を支配勢力に置こうとする日本の動きを中国側が警戒する様子が描かれている。また袁世凱が辛亥革命を通じて権力掌握をする過程、そして孫文らが当初想定した三民主義の挫折などが描かれており、清末の混迷した状況から辛亥革命への発展過程がわかりやすく解説されている。

辛亥革命が日本に与えた影響としては、日本とは異質の共和制国家が隣国に登場することに対する政府の警戒感、大正デモクラシーへの影響の波及、そしてそれを受けての吉野作造や北一輝の動きなどを論述している。その過程に於いて、日本は対中政策を決定する際に中国の内発的要因は考慮せず、中国に対する優越感に基づいていたことを著者は指摘。これが大隈内閣下における対華二十一箇条要求の根底にあるとした。

私が興味を持つ古代史、特に三国時代については経済問題に関する記述は殆ど無いために考慮することもないが、近現代史の動向を考慮する際、軽重は別にして必ず言及されている。関連書をこうして読んでいくと、やはりもう一度、しっかりと経済学の本を読まねばならぬと思い至る次第。深く勉強するつもりはないが、歴史を語る上で最低限の経済学的な知識は必要なようである。