狩野直禎『後漢政治史の研究』(同朋舎出版)

後漢政治史の研究 (東洋史研究叢刊)

後漢政治史の研究 (東洋史研究叢刊)

文字通り後漢時代の中央政界の動向に焦点を当てた文献。

全体の分量の4割前後は光武帝が統一するまでのプロセスで占められており、新末後漢初時代の各独立勢力の動向について纏めているのが特徴的である。その後、章帝期までは宗族や三公の動向を交えながら全体的な流れを追っている。しかし皇帝親政の時期が終焉し、外戚が権勢を握るようになった頃から執筆のスタンスが変わり、当時の名臣(第五倫、張皓、楊震、李固、劉陶、趙岐など)の動向に焦点を当て、当時の政治動向を解説している。

論文の執筆年代、内容からして東晋次『後漢時代の政治と社会』が似たようなテーマを志向しているため、セットで読むのが面白いと思う。互いに互いの論考に言及している。

後漢時代の研究を着手するに辺り、政治的な動きを把握したい場合には読む価値があるのではないかと考える。ただし異民族、特に羌と匈奴についてはそれぞれ佐藤長『チベット歴史地理研究』、内田吟風『北アジア史研究―匈奴編』に詳述されているとして、大きく触れられてはいない。その為、この時代の羌や匈奴について専門的に調べる場合は、本書ではなくて先に挙げた2冊を参照すると良いと思う(ただし容易に手に入る環境ではないと思う)。